ブラッセルの旧証券取引場は堂々たる歴史的建造物。しかし市場の変化により大きな会場は不要となり、ビール博物館にリニューアルされることとなった。ベルギーといえば千五百種類以上の地ビールで知られる。首都行政は新しい観光の目玉に位置付けた。コンペを勝ち取ったものの、まずは建物の保存修復、地下に出土した遺跡の保管展示、市の都合による屋外照明中断、グループ内のメンバー変更、コロナ禍のロックダウンなど困難が重なり、完成まで8年を要した。しかも、フランス語とオランダ語を公用語とする国柄から、あらゆる書類の2カ国語翻訳が義務だったり、現場での会話と議事録の言語が異なる中で調整を余儀なくされたり、と思わぬ言語の壁にいくつも遭遇した。苦労の末、威厳ある大ホールや、ルーフトップのビールの泡のように軽く浮いた屋根のライトアップなど、コンペ当初から一貫して大切にしてきたコンセプトが実現した。産みの苦しみというが、再生の苦しみというのもある。
クライアント
: ブラッセル市
プロジェクトチーム
: ロブレヒト&ダエム
期間
: 2015 - 2024
総工費
: 2500万€
面積
: 12 500 m2