フランスの公共ライトアップは全て公募コンペを経て実現されます。厳しい条件と、審査基準が羅列された応募要項を見て、独立したばかりの若手デザイナーは、皆途方に暮れるものです。特筆すべき作品例も、本人の知名度もないのに、どうやって仕事を獲るというのか?! 残された道は、ひたすらデザインコンペを狙うことのみ。
フランスの古都トゥールは、ロワール河に面した美しい中世の町。その中心にある大聖堂に付属する修道院(現在はモニュメントとして公開され、アート展示やコンサートなどにも活用されている)のライトアップ・コンペは、限られた予算と工期を突きつけられ、それらを踏まえた照明デザイン案まで提出しなければならない厳しいものでしたが、修道院の美しさに心打たれ、参加することを決意。現場で「この場所は、建設当時の夜、どうやって使われていたのか」を夢想し、月明かりに照らされたファサードと、蝋燭を手に神学書を歩きながら読んでいた(だろう)修道士達の息吹を感じさせるような、回廊の温かみのある光の対比を特化させたデザインを提案しました。ピュアなシンボリズムと、絞った内容によるエコ設計が評価されて、初めてコンペを勝ち取り、更に、一年後には、フランス照明デザイナー協会から大賞まで頂いた、思い出深い作品です。
クライアント
: フランス文化省
コラボレーション
: キャロル・フェレリ
期間
: 2007-2008
総工費
: 42万2000€
面積
: 3 000 m2