「エルメスのメガブティックが上海目抜き通りに開店するのを記念して、セレモニーを予定しているので、その光の演出をして欲しい。」と連絡を頂いたのは、本番5ヶ月程前のことでした。20世紀初頭にフランスによって建設された赤レンガと白セメントのバルコニーに縁取られた美しい建物が、フランスのメゾンによって蘇るというのです。
絵本「小さなお家」を彷彿とさせるその場所の歴史から、コンセプトを紡ぎました。周囲にはメディアファサードで覆われた、喧しい光を放つブランドショップが軒を連ねているので、そこにいくら明るさで挑んでも意味がないと考え、逆手に出て影絵の手法を採用することを提案し、中国伝統影絵のモチーフや、建物が面する大通りに茂るプラタナスの並木を墨絵にアレンジして製作した文様を投影しました。メルヘンと茶目っ気たっぷりのエスプリを大切にするこのブランドの2014年最大のイベントに、カラフルな光のポエジーが花を添えたのです。